漫画制作の注意点|評価される同人誌・投稿になる不備を減らすコツ
この記事はイラスト・マンガ教室egacoの講師(イラストレーター・マンガ家)が商業制作などで磨いた知識や技術をもとに作成しています。より自分の描きたいものに合わせた内容を知りたい方は、egacoでの個別指導レッスンの受講をおすすめします。
マンガを描くときのルールがあるらしいけど、何に気をつけたらいいの?
そんなお悩みはありませんか?
この記事では、マンガを描くときに知っておきたい注意点を3つに分けて解説します。
- 原稿用紙の使い方
- コマ割りの順番
- 絵とセリフの入れ方
「何に気をつけたらいいの?」という不安を解消して、マンガ作りを楽しみましょう!
原稿用紙で気をつけるべき4つのポイント
マンガは原稿用紙に描いた後、印刷され、雑誌や本の形になります。
そのため、印刷されることを想定してマンガを描く必要があるのです。
原稿用紙のサイズや使い方を間違えると、印刷がずれたり、思っていたものと違う大きさで印刷されたりしてしまいます。
原稿用紙は用途に合わせて準備しよう
原稿用紙は用途に合わせたサイズがある
原稿用紙には「B4」サイズや「A4」サイズといった様々なサイズがあります。
原則として、マンガを雑誌のマンガ賞に投稿するときは「B4」サイズを選びましょう。
B5サイズの同人誌を作るなら「A4」サイズの原稿用紙を使うことがスタンダードです。
同人誌用の原稿用紙に「A4(B5原寸本用)」と書いてあることもあります。
これは「原稿用紙はA4サイズ」⇒「印刷して裁断するとB5サイズになる」ことを意味しています。
雑誌や同人誌と同じサイズの紙に描けば良いと思う方もいるかもしれません。
しかし製本する際に余白を裁断する必要があるため、実際の本のサイズより大きい原稿用紙で描くのです。
また、雑誌より大きいサイズでマンガを描いておけば、印刷する際に縮小されて線が綺麗に見えるというメリットもあります。
アナログで原稿用紙を準備するときの注意点
アナログの原稿用紙にはサイズの他に「110Kg」「135Kg」という種類があります。
これは原稿用紙の厚さを表したもので、110Kgの方が薄く、135Kgの方が厚い紙で作られています。
- 110Kg原稿用紙は薄く、トレース台を使った作業に向く
- 135Kg原稿用紙は厚くて丈夫、スクリーントーンを貼る際にカッターが貫通しづらい
どちらを使ってマンガを描いても問題ありませんが、用紙の厚さが作業のしやすさに影響する場合があるので、それぞれの特徴を把握しておくと良いでしょう。
可能であればふたつとも使ってみて、使いやすい用紙や好きな用紙を選ぶことがおすすめです。
デジタルで原稿用紙を準備するときの注意点
デジタルで原稿用紙を準備する際は、サイズの他に「カラーモード」と「解像度」を正しく設定する必要があります。
カラーモードには「モノクロ(白黒2値)」「グレースケール」「カラー」の3種類があります。
雑誌のマンガ賞に投稿する場合は、カラーモードが「モノクロ(白黒2値)」の原稿用紙を使うことが一般的です。
カラーやグレースケールで描かれたものは色が均一ではないため、綺麗に印刷されない可能性があるからです。
解像度は「画像の細かさ」に関わるもので、高い方が綺麗に印刷されます。
モノクロ原稿とカラー原稿とで必要な解像度に違いがあるので注意が必要です。
- モノクロ原稿:解像度600dpi以上
- カラー原稿:解像度350dpi以上
原稿用紙を用意する時点で、解像度を正しく設定しておくと安心です。
枠線が引いてある原稿用紙を準備しよう
原稿用紙の枠線は「ここまでなら絵を描いても大丈夫」「ここに絵を描いても印刷されない」という範囲を示しています。
枠線に合わせずに絵を描くと、描いたものが綺麗に印刷されなかったり、絵が途中で切れてしまったりする可能性があります。
無地の原稿用紙を使うと印刷や裁断の基準となる枠線の位置がわからないため、印刷したときに思っていたものと違う結果になる可能性があるのです。
無地の原稿用紙に自分で枠線を引くことも可能ですが、歪みや枠線の大きさのずれが生じるおそれがあります。
アナログなら枠線が印刷されている原稿用紙を、デジタルなら枠線が設定されている漫画用のキャンバスを用意すると便利です。
内枠・タチキリ枠・外枠の使い方に気をつけよう
原稿用紙には3つの枠線が引かれています。
内側から「内枠」「タチキリ枠」「外枠」と呼ばれます。
顔やセリフは内枠の中におさめよう
内枠の外に顔やセリフを描くと、製本の際に見切れてしまう可能性があります。
外枠とタチキリ枠を間違えないように注意しよう
大きく絵を描くときは、外枠まで描きましょう。
タチキリ枠までしか描かなかった場合、製本の際に不要な余白が出来てしまう可能性があります。
コマを割る線は内枠を基準にして引こう
タチキリ枠を基準にすると、製本の際のずれでコマ割りの線が中途半端に見切れる可能性があります。
原稿用紙のノドを意識しよう
左右のページを並べて開いたとき、綴じ目から各ページの内枠までの範囲を「ノド」と呼びます。
ノドに描かれた絵は、製本されたときに紙が巻き込まれて見えなくなるため、ノド部分には何も描かないようにしましょう。
また、大事なセリフはノドから少し離して配置した方が読みやすくなります。
ページごとに、原稿用紙の右側・左側のどちらかにノドが来ます。
間違いのないように確認しながら描いていきましょう。
原稿を送る雑誌や印刷所のルールを確認しよう
マンガ雑誌で受け付けているマンガ賞に原稿を送るときは、送る雑誌の応募のきまりを必ず確認してください。
応募のきまりは雑誌ごとに少しずつ異なる場合があり、きまりに違反すると送ったマンガを受け付けてもらえない可能性があるためです。
応募のきまりは雑誌に掲載されているマンガ賞のコーナーに書かれていることが多いので、確認しましょう。
また、それぞれの出版社のホームページでも確認できます。
描いたマンガを同人誌にする場合は、利用する印刷所のマニュアルを必ず確認してください。
マニュアルは印刷所のウェブサイトに掲載されています。
印刷所によって取り扱い可能な原稿用紙のサイズ等が異なる場合があります。
印刷所によっては原稿用紙のテンプレートを用意しているところもあります。
自分で原稿用紙を用意するのが不安なときは、テンプレートを利用すると安心です。
コマ割りで気をつける3つのポイント
コマ割りをするときに気をつけるポイントは、大きく3つに分けられます。
コマは右上から左下に向かって読む
日本のマンガの読み方は、基本的に「右から左、上から下」となります。
逆Zの順で読む、と考えると良いでしょう。
その流れに合うようにコマを割っていきましょう。
コマとコマの間隔は左右を狭く、上下を広くとろう
マンガを読んでみると、コマとコマの間隔が左右と上下で違うことがわかります。
この間隔がすべて同じだと、読む順番がわかりづらくなってしまうからです。
基本的にはコマの左右の間隔は狭く、上下の間隔は広くとります。
・左右の間隔:2mm~4mm
・上下の間隔:5mm~10mm
この幅が、読みやすいコマ割りの目安となります。
1ページあたりのコマ数は5~6コマまでにしよう
コマ数が多いと、絵が小さくなって見えづらくなったり、画面がごちゃごちゃとして読みづらくなったりして、大事なコマが埋もれてしまう可能性があります。
1ページあたりのコマ数は、多くても5〜6つくらいまでにすると、すっきりとした画面を作れます。
コマ割りを考えるときは、見開きの状態で考えるのがおすすめです。
「右のページのコマ数が多いなら、左のページではコマ数を減らす」といった調整をすれば画面にメリハリがきくからです。
見開きで全体のバランスを見ながらコマ割りをすると良いでしょう。
セリフと絵の入れ方を理解しよう
原稿用紙にコマを割ったら、あとはセリフと絵を入れるだけです。「セリフの入れ方」と「絵の入れ方」に分けて、ポイントを押さえましょう。
セリフは内枠の中に収めよう
基本として、セリフは内枠の中に収めましょう。
内枠は「本になった際も必ず読みやすい場所に印刷される範囲」を表すものです。
内枠の外にセリフを置くと、製本された際に画面の端にセリフが寄って読みづらくなってしまいます。
セリフは発言順に置いていこう
セリフは発言する順番にあわせて、右から左の順に置いていきましょう。
順番が違っていると、会話の流れが伝わらなくなってしまいます。
ふきだしには余白を持たせよう
ふきだしの中にみっちりとセリフが書かれていると、読むのが大変です。
そんなときはふきだしを広げたり、ふきだしを分けたりしましょう。
ふきだしはセリフより一回りほど大きいとすっきりとして見えます。
余白をとることで、強調したい部分もはっきりとします。
もうひとつ注意したいのが、セリフの文字の大きさです。
ありがちなのが「小さく書いてしまう」ことです。
小さく書くと読みづらいだけでなく、「まだ入る!」とセリフを詰め込む原因にもなりかねません。
セリフは気持ち大きめに書くと、読みやすくなります。
ふきだしに入らなかったセリフは思い切って削ることも大切です。
ふきだしのしっぽはキャラクターの顔に合わせよう
ふきだしのしっぽは、発言しているキャラクターの顔や口元に向けて描きましょう。
しっぽがキャラクターの顔や口元からずれていると、発言している人がわかりづらくなります。
その他にも、意図していないところからセリフが出ているように見える場合があります。
絵を入れる位置を考えよう
コマ割りやセリフの順番が決まったら、それに合わせてキャラクターを描いていきます。
セリフがあるときは、誰の発言かわかりやすい位置にキャラクターを描きましょう。
セリフと同じく、大事な絵は製本したときに見切れないよう、内枠の中に収めましょう。
ポイントを押さえれば、誰でもマンガが描ける!
初めてマンガを描くときは「何か間違ってないかな?」と不安になりますよね。
この記事を通して、マンガを描く上での注意点と、なぜ気をつけるのかをご理解頂けたと思います。
今回ご紹介したポイントを押さえれば、初めてのマンガ作りも安心です。
自信をもってマンガ作りを楽しんでくださいね!