中村エイト先生作家インタビュー!絵を仕事にするアプローチから作画コツまで
中村エイト先生は、ロボットやモンスターなどの緻密な作画を活かした迫力あるカードイラストの数々を生み出すプロイラストレーター。
現在では、嵯峨美術大学で講師としてもご活躍中で後進の育成にも尽力されています。
代表作となるデュエル・マスターズやパズル&ドラゴンズを始めとしたゲーム作品で多くのカードイラストをご担当されております。
特にデュエマシリーズはご自身でも作品を愛好されていたこともあり、絵柄のベースとして大きく影響を受けたそうです。
また高いクオリティを誇る作画だけでなく、魅力ある女性イラストまで幅広く描かれます。
中村エイト先生にインタビュー!絵のお仕事・作画工夫も
絵を描く仕事がしたいといつから思い始めましたか?
中村先生:「好きな絵」がもっぱら漫画やアニメ系のイラストだったことと、父が自営業で個人事業主の大変さを知っていたので、絵を職業にすることは両親にあまり良い反応はされなかったですね。
ただ両親とも映画やドラマが好きでしたし、絵を描くこと自体には理解があって、どれだけ描いていても止めたりしなかったことはとても感謝しています。
影響を受けた作家や、絵を描くきっかけとなった人物はいらっしゃいますか?
中村先生:また、子供時代に流行り物のカードゲームや男児向けホビーをあまり持っていなかったので、それらへの強い憧れが今の自分の絵柄を作っていると感じます。
作画に説得力をもたせるための工夫であったり、よく活用している資料などございますか? 上達のヒントなどもあればあわせてお願いいたします。
差し支えなければ子供時代にカードゲームや男児向けホビーを持てなかった理由につきましてお伺いしてもよろしいでしょうか?
締め切りを意図的に作りつつ、継続して制作してきた過去
イラストレーターや漫画家に憧れる方が多い中、プロになる前の中村様はどのような活動やアプローチをされましたか?
中村先生:なので絵のレベルアップは続けつつ、友人を誘って二週間に一度絵を完成させる企画を行なって、それを続けてちょうど1年過ぎた頃ゲームイラストのご依頼をいただけたので、大切なアプローチだと今でも肝に銘じています。
ご友人を誘って二週間に一度絵を完成させる企画については、どんな内容でしたか?
中村先生:締め切りを守る意識を作りたかったものの描くことが嫌になっては本末転倒なので、出来るだけラフな気持ちで続けられるように心がけて人を集めていました。
ただ企画が止まると参加してくれる側のモチベーションも無くなるので、特別なことが無い限り自分は絶対に落とさないようにしていましたね。
中村様は、美術系大学に通われていたのでしょうか?
中村先生:一番強く感じたメリットは「似た趣味趣向で全く違う価値観を持った人が集まる空間に長く居続けられること」ですね。
作品への好きを表す手段が「グッズを買う」「キャラを描く」「服装を真似る」など様々だったり、同じものを観ても全然違う部分を評価していたり、
創作を仕事にしたいか趣味にしたいか区別していたりあやふやだったりで、勉強や練習では得られにくい貴重な経験を得られました。
魅力的な絵を描くためのコツや、おすすめの上達法ってありますか?
中村先生:これは「30万フォロワーの神絵師になるために描く」とか「登録者100万人のVtuberを作る」とかの他人依存で壮大なものではなく、「いつもと違う色の組み合わせを使う」「前より少しだけ可愛い顔にする」「最終調整を早く仕上げる」など少し曖昧で身近な、その絵のためだけの目標です。
これの良いところは負荷が少ない割に得られる経験値が大きく、枚数を重ねるほど効果が上がっていくことで、何となくで描くよりも格段にレベルアップできると考えています。
絵を描くのに悩んだりつまづいたりしたご経験はありますか?
中村先生:そうなったらまずは時間を決めてタイムアップまでは手を動かして、その後きちんと寝てご飯を食べて、止まった絵や集めた資料を眺めながら考えをまとめます。
次に描き始めた時は身体的にも精神的にも回復し、繰り返し考えたことで悩みが減るため乗り越えられることが多いです。
中村先生の仕事をする日の時間配分や休日の過ごし方を教えてください。
中村先生:最近は10時前に起きて軽く朝食をとり昼までメールチェックや簡単な作業、12時前後に昼食をとり20時頃まで(夕飯を作る場合は19時頃まで)仕事をして、その後夕食を食べ21時から25時頃まで仕事・・・というスケジュールになることが多いです。
急ぎでない時の昼や夜、休日は趣味の絵を描いたりゲームやプラモ作ったり、サイクリングなどをしています。
仕事中は音楽をかけたり動画や映画をながら見していますね。
アイデア出しやメール中は何度も聞いたり観たりしているものをかけますが、在宅勤務が基本でどうしても刺激が少なく感覚が鈍りがちなので、それ以外の時は新しいものにふれるようにして変化をつけています。
中村先生は1枚の作品をつくるのにどれくらいのペースで描き上げられますか?
中村先生:一枚につき平均4日はかけますね。
慣れているものや要素の少ないものは2日程度で完成しますが、手の込んだものは一週間以上必要な場合もあります。
中村先生の代表作に「デュエル・マスターズ」カードイラストがありますが、構図やデザインを含めて世界観を作るために心掛けていることを教えてください。
中村先生:自分はオリジナル絵でも仕事のように指示書がある前提で描くことが多く、例えば下の赤い翼のドラゴンと女の子キャラクターのイラストは、
「秋をテーマに、紅葉を模した翼を持つドラゴンと厚着の女の子がいる背景付きイラストで、Twitterのプロフィールに使用できるもの」という依頼を想定しています。
中村先生:なので上記の部分は絶対に変えず、それ以外のポーズや構図、色のトーンは自由度高めで好きなように発想しています。
あとは統一感を感じさせるギミックも大事にしているかもですね。
「ギミック」なことが重要だと思っていて、カードゲームで言えばファンの方が気づいてニヤリとしてくれるような要素を密かに仕込むと、絵を見てもらえる時間が増えて印象に残りやすいのではと考えています。
お仕事で使われている道具や機材、作画環境を教えて頂けませんか?
- iMAC(Retina 27inch 2019)macOS Catalina
- 3.6GHz 8コアIntel core i9,メモリ40GB
- WACOM intuos pro L(板タブ),SANWAテンキー(ショートカットボタン用)
- PhotoshopCC2019(着色、効果、調整),CLIP STUDIO PRO(線画、着色レイヤー分け)
デジタルに移行する際に液タブと板タブで悩んだり、線の描き心地に戸惑う方も多いのですが、中村先生がデジタル作画を鍛えるために工夫したことなどございますか?
中村先生:あとは新しいツールでしかできない表現をとにかく楽しんでいましたね。完成した時のクオリティを無視して色々と機能を試したりしていて、「良い作品作らなきゃ」とは考えていなかったので逆に上達につながったのかもしれません。
板タブメインなのは描く姿勢が悪くなりにくいこと、堅牢さや壊れた時の修理、買い替えコストの安さ、持ち運ぶ時の利便性のためです。
過去の中村様にご質問です、絵の練習をしたいと思い立った時にもし身近に頼れる先生やプロがいたら何を教えてほしいですか?
中村先生:過去の自分なら、
- 自分の絵や趣味趣向を受け入れてくれる場や仕事があることと、それらへのアプローチの方法
- 粘り強く絵を描き続けるためのメンタリティ
- 税金や保険など金銭面のやりくりや契約書の正しい見方など事務手続きの方法
などを教えてもらいたいと思うはずです。
絵を仕事にする上で中村先生が大事にされていること
「好きなメディアで仕事ができる」チャンスを掴むためのアプローチ方法につきまして、プロ作家を目指す方々にアドバイスをお願いします。
中村先生:チャンスを掴むアプローチは
- 必要とされる絵とメール文書のスキルを持つ
- 好きなメディアを運営している会社に向けてアピールする
- 誰かを悪者にする考えをネットに書かない
などが大事でしょうか。絵と文書スキルは取引先とのやり取りを円滑にするので言わずもがなかと思います。
アピールは会社相手ということが重要で、好きなメディアのファン層に好かれる(界隈の有名人になる)ことと運営会社に好かれる(仕事のパートナーとして信頼される)ことはちょっと違うので、ここの舵取りを間違うと大変かもしれません。
悪者にする考えを書くことは「パートナーとして信頼される」とつながる部分で、大勢の人がいる場所で誰それが悪いと言ってしまえる人は仕事でも言うのではと思われ、チャンスを無くす可能性があります。
粘り強く絵を描くためのメンタリティについてアドバイスするなら具体的にどうお伝えされますか?
中村先生:楽しめる絵が分かれば無理な仕事を受ける確率もぐっと減り、受ける自分にも頼む相手にも良い効果があると思います。
あとは、自分は調子を崩した時に誰かと話すことが減っていたので、悩みを話せる相手を作ることも重要に感じています。
特に重要と感じる活動や準備がございましたら教えてください。
中村先生:同じジャンル、同等のクオリティで仕事をしている方は仕事以外でもつながっている事があり、そういった方々に良い意味で認知してもらえれば仕事に繋がることもありますし、やはり知ってる相手には頼みやすい心理はあると思いますね。
実際自分は作業通話した方からの紹介で依頼を受けたことが何度もあります。
個別指導で一人づつの課題に対して提案や指導が受けられるスクールに中村先生が絵を描きはじめて間もないときに通われておりましたら、何を教えてもらいたいですか?
中村先生:受講される方の状況に沿った指導ができる点も大きなメリットに感じます。
もしも自分が描き始めで教えてもらうとしたら、「建物の描き方」「動物の描き方」「骨格の描き方」など、一つのモチーフに重点を置いた集中授業のような形式で受けられたらきっと随分助けられますね。
作家紹介:中村エイト先生
ロボットやモンスターなどの緻密な作画を活かした迫力あるカードイラストの数々を生み出すプロイラストレーター。代表作:デュエル・マスターズ、パズル&ドラゴンズ
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