七原しえ先生にインタビュー!作画を継続するコツやお仕事へ繋ぐ方法
ここでは、現代和風イラストを中心に、カードイラストやソシャゲイラストなどのゲームイラスト、書籍装画、教本など、
幅広いイラスト制作でご活躍されている七原しえ先生(画集:緋花 根の国底の果て 七原しえ画集)にインタビューさせて頂きました。
これからイラストレーターを目指す方や、商業でのイラスト制作にご興味がある方はぜひ参考にして下さい
七原しえ先生インタビュー!作画コツや作画環境も紹介
七原しえ先生の普段の活動につきまして自己紹介をお願いします!
七原しえ先生:ジャンルは現在和風イラストが中心で、ソーシャルゲームイラスト・コンシューマーゲームイラスト、
カードゲームイラスト、書籍装画、イラスト教本などを手がけています。
主な経歴としてはFGO、MTG、第五人格、漫画のカラー背景などがあります。
また、ご依頼イラストとは別にオリジナルイラストを制作しSNS等で公開していますが、
こちらはイラストの練習と企業さん向けのポートフォリオを兼ねていることがほとんどです。
絵を描く仕事がしたいといつから思い始めましたか?ご家族や周囲の反応などあれば合わせてお願い致します。
七原しえ先生:10年ほど兼業イラストレーターを続けていましたが、東京から青森に引っ越したこと、
イラストレーターとして独立しても何とか軌道に乗りそうになったことからここ数年で本業として専念することにしました。
私の家族は互いの趣味や仕事は『何だか楽しそうにやっているから良いんじゃない』とあまり口を出さず好きにさせることがほとんどなので、本業としてやっていくことに対して周囲から特に異論はありませんでした。
よろしければ、当時の1週間のスケジュール、1日の時間配分などをお聞かせください
いつからイラストを描き始められましたか?またそのきっかけなどはございましたか?
七原しえ先生:イラストとは全く関係のない大学を卒業したので、それまで漫画もアニメもあまり接する機会がありませんでした。
就職してから自由な時間が増え、趣味を持とうと偶然広告で見たペンタブを購入したのがきっかけです。
当時Blogが盛んで、私も1日1枚イラストをUPする目標でイラストを描き始め、そのうちPixiv等にも作品を載せるようになりました。
商業イラストをお受けしたのはPixivを初めて2~3年後に、載せていたイラストをご覧になられた商業作家さんから直接ご連絡を頂いたのが最初です。
絵の描き方やデジタルソフトの操作は、すべて独学で学んでこられたのでしょうか?
七原しえ先生:そちらの機能で物足りなくなったため次はSAI、次はClipStudioとPhotoshopというように
表現したい手法が増えるに従ってソフトを変えてきています。
ソフトごとに描き方・使い方本が多数出ていましたし、ネットやSNSでもプロの方のソフトの使い方・イラストの描き方アドバイスを
見ることが出来るのでそういったものを参考にし、自分に合った手法を取り入れたりしながら学んできました。
初めてご依頼を受けてから現在まで、クライアントとのやり取りの際に気を付けられていることは何でしょうか?
七原しえ先生:数多くのイラストレーターさんがいる中で自分に依頼してきた理由は何か・自分が描いたどのイラストを見て依頼してきたのか、を
知ることは非常に大事だと思います。そちらをお仕事イラストに反映させないと、クライアントさんがお金をかけて
会社の大事な商品の一部を託すために自分に依頼してきた意味がなくなってしまうからです。
自分のイラストにどういう特徴があって、他者の目から見て自分も気づかないどういう魅力があるのかを知るきっかけにもなります。
特に直接企業さんからご依頼を頂いた場合、『自分が描いたどのイラストを見て依頼してきたのか』を先方に伺う事は非常に重要だと思います。
もしお仕事のやりとりをすることになった際は上記は聞いておいて損はないと思います。
イラストレーターや漫画家に憧れる方が多い中、プロになる前の七原先生はどのような活動やアプローチをされましたか?
七原しえ先生:ソーシャルゲームのアイテムやちょっとした背景・NPCキャラ、書籍の小さな挿絵など名前の出ない様々なお仕事を受けて2~3年すると
指名でお仕事が入ってくるようになり、その後徐々にゲーム会社さんから直接お仕事のご依頼を受けるようになりました。
現在も続けている事は、私の場合はお仕事以外のオリジナルイラストを描いてネット上にUPすることです。
新規でご依頼を頂く時に必ず『何を見てご依頼頂いたのか』を先方にお聞きするのですが、9割がSNS・Pixiv経由・ご覧になられたのはオリジナルイラストでした。
※これはイラストレーターさんによって異なるとは思います。
企業さんはイラストレーターのSNSをしっかりチェックしていらっしゃいます。
自身の作品を常に作り続け、発信し続けていくことが大事だと思っています。
イラストレーターを目指す方々には、どのような作品を発信しポートフォリオに掲載すべきか悩む方も多くいます。得意な分野を伸ばすか、幅広い分野で描いていくべきか等の質問も多いものですが、七原様が制作の基準とされていることをお聞かせください。
七原しえ先生:もしこういう分野でのイラストのお仕事を行いたい、という明確な意思があるのでしたら、そちらに特化したポートフォリオを別で作った方が企業さんの目にも留まりやすいです。
一つ付け足しでお話をすると、特に気をつけたいのが成人向け・全年齢向けのはっきりとした区別化です。
今の時代はSNS自体をポートフォリオとして企業さんが見ていらっしゃいます。もし児童・子供向け(全年齢向け)・海外のお仕事をしたい場合は
成人向けイラストはUPしない・もしくは完全にアカウントを分けて区別化する(ペンネームも変更する)等対策を行う必要があります。
コーポレートイメージ、宗教・倫理観マナーは何よりも優先されますので、将来を見据えた場合は分野の棲み分けなども考慮しながら制作を行った方がいいと思います。
継続して1日1枚の絵を描き続けるためのモチベーションの維持やメンタルの回復法はありますか?
七原しえ先生:習慣が継続しない原因に、疲れている日など『面倒くさい』と思ってしまうことがありますが、
『面倒くさい』の最初の文字「め・・・」が頭に浮かんだ時点で思考をストップさせ、ペンを手に取ってイラストを描き始めるのが効果的です。
どんなに忙しくても絵を描くのが楽しいという気持ちでいられる事が重要です。
魅力的な絵を描くためのコツや、おすすめの上達法はございますか?
七原しえ先生:イラストを見た人がそのイラストが何を表しているのかを瞬時に理解出来る、というのが大事です。
魅力的=目に留まる、ということなので、理解しづらいイラストは見ている人の目をあっという間に素通りしてしまいます。
配色も同じで、色の配色パターンだけで人は自然とそのイラストがどういう物体を描いたものなのか、どういうシーンなのか、という事を連想することが出来ます。
しっかりと配色を考えてイラスト全体の印象の方向性を固める事が必要です。
分かりやすく、見る人に親切なイラストが魅力的な絵なのではないかと思っています。
魅力的に見せる色の選び方について、勉強のコツや練習されたことがあればお伺いしたいです。
七原しえ先生:まずベースとなるテーマカラーを1色決めて、画面全体はその同系色でまとめます。差し色はテーマカラーと異なる系統の色を1色、多くても2~3色です。
カードゲームなどは勢力・カテゴリーを色で分けていたりするので、上記を練習しておくとテーマに沿った魅力的なイラストが描けるようになると思います。
絵を描くのに悩んだりつまづいたりしたご経験はありますか?どのように逆境を乗り越えたかもあわせてお願い致します。
七原しえ先生:あとはアイデアが出ない時ですね。アウトプットが出来ない時は基本インプットが足りていないので、
本を読んだり写真を撮ったり、思いがけないところから構想が沸く場合もあるのでとにかくジャンルを問わず世の中の色々な情報に触れて
知識をアップデートするようにしています。
七原先生は、お仕事の絵を描かれる時に決めている習慣などございますか?
個人的に上記が一番集中力が出て、なおかつ疲労が溜まらないような気がします。
音楽は気が散ったりイラストに影響が出てしまうため基本は流していません。
糖分やカフェインは必要以上に疲れたり、本当に疲れている時に身体が休まらなくなることがあるため控えめに、
ただ、ずっと椅子に座っているとエコノミー症候群になりやすいため、水分は多く取るようにしています。
お休みの日は、海で瑪瑙を拾う趣味があるので天気の良い日はなるべく外に出て歩くようにしています。
七原様の作品には密度の高いイラストが数多くございますが、制作時に気を付けていることや意識されている箇所はありますか?
七原しえ先生:基本的に画面に動きがある構図が好きで多く描いているのですが、動きがおかしかったり不自然な流れがあると見ている人にも確実に違和感が伝わります。
密度の高いイラストの場合、上記は特に気をつけて描きます。小物などの配置や流れにおかしな部分はないか注意しながら1つずつ方向や形に気をつけながら配置を整えて制作しています。
レイヤー管理はパーツごとにフォルダ分けして制作時すぐに名前を付けています。
クライアントへの納品時はレイヤー未統合の生原稿状態でpsdファイルを提出することもあるので、レイヤーを作ったらすぐにフォルダやレイヤーに名前を付けておくと後で困りません。
和をテーマにした幻想的な世界観が美しい七原様の作品。現在の世界観になったきっかけや、描いていて特に楽しいと感じる部分や工程をお教えください。
七原しえ先生:細かく描くことは苦痛ではないので、線画をひたすら描いたり小物のビーズなどを1点ずつ書き込んでいる工程が好きだったりします。
七原しえ先生は1枚の作品をつくるのにどれくらいのペースで描き上げられますか?構想やアイデア、線画、塗りでそれぞれ何時間~何日くらいか教えてください。
七原しえ先生:先方からのチェックバックに2~3日、土日を2日入れると上記合わせてちょうどラフから納品まで1ヶ月、という計算になります。
オリジナルの場合はイラストによって異なりますが、本当に描きたい構図やテーマが見つからない時はラフに1~2ヶ月使うこともあります。
その後はお仕事イラストと同じく、大体線画2日に着彩5~6日となります。
仕事で使われている道具や機材、作画環境を教えてください。
- 液晶タブレット:WacomCintiq 27QHD touch
- デスクトップPC: FMV ESPRIMO(Core i7/16G)
- ソフト:ClipStudioPaint、Photoshop
- プリンター:CanonPIXUS
七原しえ先生:企業のご依頼を受ける事を想定している場合、自作PC・中古PCは使用せず純正品PCと常にアップデートされているソフトを使用するようにして下さい。
ウイルスや故障の危険が高く、何かあった時保障が効きません。(作業環境の申告を契約書に明記されている場合もあります)
過去の七原先生にご質問です、絵の練習をしたいと思い立った時にもし身近に頼れる先生やプロがいたら何を教えてほしいですか?
弊社は個別指導のイラスト・マンガ教室を運営しているのですが、個別指導で一人づつの課題に対して提案や指導が受けられるスクールについてどう思いますか?
七原しえ先生:100人いれば100人それぞれ違った悩みや疑問点がありますので、上達スピードは格段にUPするのではないでしょうか。
先生方が生徒個人の強み・弱みを明確に理解し、生徒は何が希望で今何を学びたいのか・将来どうなりたいのか先生にはっきり伝えること、
両者をうまくすりあわせて信頼関係を築くことが一番だと思います。
今後の活動について、やってみたいことや目標はありますか?また七原様のようにプロの作家を目指す皆さんへメッセージやアドバイスをあわせてお願いします。
七原しえ先生:今はプロの作家に比較的なりやすい時代だと思っています。
PCとネット環境があれば世界中からお仕事を受けることが出来ますし、Pixiv・インスタなど作品を発表する様々な場があります。
2D・3D・動画など目的に応じた多くの制作分野があります。
企業からだけでなくNFT・コミッションなど報酬を得るための幅広いツールも確立されつつあります。
自分が活躍できる場を自分で選ぶことが出来やすい社会になってきているということです。
これはプロを目指す方にはかなり有利な追い風になっていると感じています。
プロの作家になるルートは沢山あります。もちろんいきなりプロになれるという訳ではありませんが、
ご自分に合った方法で実績を積んで、自分独自の道を歩んでいって欲しいと思っています。
作家紹介:七原しえ先生
七原しえ先生は、現代和風イラストを中心に、カードイラストやソシャゲイラストなどのゲームイラスト、書籍装画、教本など、幅広いイラスト制作でご活躍されていらっしゃいます。
七原しえ先生の画集や最新情報は下記からご確認下さいませ。
→七原しえ先生のTwitter