起承転結は漫画制作の基本!話のまとめ方と盛り上げるテクニック
目次
この記事はイラスト・マンガ教室egacoの講師(イラストレーター・マンガ家)が商業制作などで磨いた知識や技術をもとに作成しています。より自分の描きたいものに合わせた内容を知りたい方は、egacoでの個別指導レッスンの受講をおすすめします。
マンガのストーリーを考えるには「起承転結」が大事だと聞いたことはありませんか?
しかし起承転結をもとにしたストーリーの作り方に悩む方も多いですよね。
起承転結を扱うには、「起」「承」「転」「結」のパートごとの役割を理解してエピソードを構成することが大切です。
この記事では起承転結の役割と、ストーリーの面白さをアップするためのポイントをご紹介します。
起承転結を押さえてストーリーを整理し、読者の心をつかみましょう!
起承転結とは、ストーリーの骨組み
起承転結は、もとは漢詩における構成法の1つです。
- 起句…うたい起こしの第一句
- 承句…起句を受けて発展させる第二句
- 転句…場面を変える第三句
- 結句…全体をしめくくる第四句(結句)
4つからなる形式を言い、物語や文章の構成における基本として使われます。
マンガの話作りにおける起承転結とは
- 起…スタート。主人公の目的を明確にする。
- 承…ストーリーを広げる。起を受けてイベントを起こし、転へ繋げる。
- 転…クライマックス。状況や感情を大きく動かし、盛り上げる。
- 結…ゴール。主人公の目的を達成させる。
の流れをもとに考え、起承転結に沿ってストーリーの筋道や盛り上がり、キャラクターの感情の起伏を整理して、マンガの話の骨組みを作ります。
起承転結で主人公の目的を達成させよう
ストーリーを考える際は、スタートとゴールを最初に決めておくと整理しやすいです。
マンガのストーリーのゴールは「主人公が目的を達成すること」が基本です。
例:悪役を倒す、好きな人と両想いになる、世界一の地位を得る 等
主人公がどんな目的を達成するのか最初に決めておくと、スタートである「起」からゴールとなる「結」にかけてテーマやストーリーが一貫でき、間の「承」「転」も考えやすくなります。
主人公の目的が思い浮かばない時は、「起」と「結」で主人公の変化を描きましょう。
例:出来ないことが出来るようになった、価値観が変わった 等
目的や変化をもとに「何がどうなる話」なのかを最初に設定することでストーリーの軸が決まり、話を盛り上げるための流れやエピソードに繋がります。
「ピンチ→乗り越える」の波を描けばストーリーが面白くなる
何のトラブルもなく主人公の目的が達成されては、ストーリーに盛り上がりが生まれません。
ストーリーを面白くするポイントは「ピンチに陥り、乗り越える」ことを繰り返して波を描くことです。
ピンチとは「主人公が困ること」です。
好きな人に自分の恥ずかしいところを見られてしまう、自分の能力を使えず窮地に陥る等、主人公の性格や特徴にあわせてトラブルや事件を発生させ、解決する流れを描きましょう。
ピンチの度合いは小さいものから始まり、徐々に大きくしてクライマックスの「転」で最大の危機を用意します。
好きなマンガや映画等を見て「ピンチ→乗り越える」の流れを研究すると良いお手本になります。
起承転結のコツを押さえよう
主人公の目的や変化、作品のスタートとゴールを決めた上で、起承転結のパートごとにエピソードを整理しましょう。
「起」は主人公の目的を示す
「起」は冒頭部分にあたり、読者にどんな作品か読者に知ってもらう大事なパートです。
特に重要なのは「どんなゴールに向かって進むマンガなのか」を示すことで、そのためには出来るだけ早く主人公の目的を紹介するエピソードを入れましょう。
「主人公がどうなりたいのか、どう変化したいのか」=「作品のゴール」を最初にはっきりと示すと、読者はその目的がどうやって達成されるのか予測しつつ、主人公に共感したり応援したりしながら読み進められます。
逆に目的やゴールがないままでは「この作品はどこに行くのだろう?」という不安に繋がり、読者にストレスを与えてしまいます。
また目的やゴールを示す際は「〇〇になりたい」と言葉で示す以外に、ゴールとは正反対の現状を描くことも有効です。
例えば「そりが合わない相手が居る」ことを描けば「その相手との関係性が良くなる」ことを期待させ、「これまでの平穏な日々」を描けば「崩れ去る平和と、それを取り戻すストーリー」を暗に示せます。
「承」はピンチを描きストーリーを広げる
「承」は起を受けて状況を変え、転に繋げる役割を持ち、主人公の目的達成に向かってストーリーを進めるパートです。
「承」の構成は、事件やトラブル等のイベントが発生→解決・進展し、目的達成に近づくという波を描きましょう。
トラブルを解決したりピンチを乗り越えたりする中で、キャラクターの行動や気持ちを描いて個性や魅力を表現し、読者にキャラクターを好きになってもらうパートでもあります。
同じトラブルやピンチでもキャラクターによって乗り越え方は変わるので、キャラクターの個性が最も輝き、魅力を表現できるエピソードを練りましょう。
「転」は大ピンチでストーリーを大きく動かす
「転」は全体の中で最も盛り上がる「クライマックス」の部分です。
起承を受けて、主人公の感情や行動、状況に大きな変化を起こします。
状況に変化を起こすには、主人公にとって最大の困難を与えます。
「承」では問題の発生→解決の流れを描きますが、「転」は主人公が自力で解決出来るかどうかわからない程に大きなピンチを用意します。
バトルマンガなら勝ち目のない強敵が現れたり、恋愛マンガなら逃げ出したくなる程の心理的ハードルを感じるイベントが起きたりしても良いでしょう。
主人公が最も恐れていることや苦手とすること、今まで出来なかったことが壁となって立ちはだかるエピソードを考えてみましょう。
大切なのは、起承での積み重ねを経て、大きな困難を主人公が乗り越えることです。
最初はできなかったことが、できるようになったり、行動や感情が大きく変化したりすることで、主人公の集大成を表せます。
読者が「今まで頑張ってきた主人公ならできる!」と背中を押したくなるエピソードを描けるのが理想です。
「結」は主人公の目的を達成させる
「結」は結末で、ストーリーのしめくくりです。
「転」から「結」にかけて主人公の目的を達成させ、ストーリーを完結させましょう。
目的を達成していなかったり、ストーリーの方向性が変わったりすると、作品としての軸がぶれてしまいます。
物語の続きやキャラクターのその後は、読者の想像にゆだねるつもりで短く切り上げて構いませんが、読後感は意識しましょう。
読後感とは、マンガを読み終えた読者にどう感じてもらいたいかです。
基本として、キャラクターやストーリーに対して安心感や好意等のポジティブな気持ちを抱けるようにしめくくると良いでしょう。
ホラーマンガなら「怖かった」等、作品やジャンルによっては想定した読後感を引き出せるエピソードを入れましょう。
読者の作品を楽しむ気持ちを裏切らないように、読者の意表を突いてバッドエンドにしたり、マイナスな感情を抱かせたりする展開は避けましょう。
話を盛り上げるには転を軸にして変化を作ろう
起承転結をもとにストーリーを作ってもいまいち面白くないと感じる場合、感情や状況の変化が少ない可能性があります。
起承転結にあわせて主人公の気持ちや状況の盛り上がりも具体化すると、よりストーリーを整理しやすくなります。
主人公の気持ちや状況の変化は作品によって様々ありますが、
- 徐々に上がり、転で最高潮に達する
- どんどん下がり、転で一気に盛り上がる
の2パターンを軸に考えると良いでしょう。
徐々に上がり、転で最高潮に達する
「起」「承」でプラスのエピソードを積み重ね状況が良くなり、気持ちが高まる⇒「転」で大きな壁にぶつかるが乗り越えるパターンです。
「起」時点の主人公は「目的を達成していない」「変化していない」状態のため、気持ちや状況はほとんど高まっていません。
「承」で「問題を解決する」「目的に向けて前進する」「考え方や価値観が少しずつ変化する」といったエピソードを入れて徐々に気持ちを向上させます。
「転」では主人公は大きな壁にぶつかりますが、「起」「承」で積み重ねたものによって壁を乗り越え、感情や状況は最高潮に達します。
「転」から「結」にかけて主人公の目的が達成されたり、変化が起きたりしてハッピーエンドに向かうと良いでしょう。
どんどん下がり、転で一気に盛り上がる
「起」「承」でマイナスのエピソードを積み重ね状況が悪くなり、気持ちが落ち込む⇒「転」で一気に形勢を逆転するパターンです。
「起」における主人公は平凡もしくは幸せな生活を送る等、気持ちとしては高い位置にあることが多いです。その後どんどん転落していくことで、最初の状況との落差を描けます。
「承」では状況が悪化するエピソードが入り、主人公は追いつめられ気持ちはどん底に陥りますが、状況が好転するための布石も打たれます。
「転」では最も危機的な状況に陥りますが、「承」で打たれた布石をもとに形成を逆転し、状況や感情は一気にポジティブなものに変わります。
「結」はポジティブな感情のまましめくくります。
マンガのページ配分は「承」「転」を多くしよう
ページを起承転結で4等分すると、入れたいところに情報が入らなかったりテンポが悪くなったりします。
読者の心をつかむために冒頭は短く簡潔にし、その後のエピソードにページを多く取って読者にキャラや世界観等の魅力を伝えましょう。
目安:起…20%、承…45%、転…30%、結…5%
一般的な読み切りとして必要な32ページのマンガなら、
起…6ページ、承…14ページ、転…10ページ、結…2ページ程度が目安です。
起承転結を踏まえたストーリーの具体例を紹介
起承転結の役割を踏まえ、ストーリーの具体例を見ていきましょう。
- 起:平凡に生きてきた主人公が陰謀に巻き込まれ、追われる身となる。
ゴール(目的):「自由の身になること」 - 承:追われ見つかる度に何とか追手をかわし、逃げ続ける主人公。その道中で友人が味方してくれるようになる。
問題:あらゆる手段で追いかけられる
解決:一時的に追手をかわす、協力者を得る - 転:追手に包囲され捕まる寸前となるが、友人の助けを受けながら状況を脱する。
最大の問題:捕まる寸前になる、絶体絶命のピンチ
解決:完全に状況を脱する - 結:追手から解放され、主人公は自由の身となる。
起承転結を押さえて読者の心を動かそう!
起承転結を意識すると主人公の感情や状況の変化・盛り上がりを表現でき、読者にわくわく、ドキドキ、ハラハラしてもらえるようなストーリーが作れます。
キャラクターの魅力を表現出来るエピソードや、読者に共感してほしい場面を整理しながら、ストーリーを組み立ててみてくださいね。