イラストレーターorie先生にインタビュー!描き方・色選びコツも
「ひとりぼっちの夜にそっと寄り添えるような作品」をテーマに制作され、1枚1枚にそっと包み込むような温かみや優しさの息吹を吹き込むイラストレーターorie先生(画集:ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK orie– 翔泳社 -)
絵本を思わせる淡いタッチで描かれる愛らしい少女たちは、本当に触れられそうな存在感を感じます。
楠木ともり様やカンザキイオリ様などの人気アーティスト陣のMVイラストを始め、書籍の装画やジャケットアート、キャラクターデザイン、グッズ販売と幅広く活動されています。
そんなファンの心に響かせる作品つくりを続けられるイラストレーターorie先生のルーツや制作姿勢、色選びのテクニックについてお聞きしました!
orie先生にインタビュー!
orie先生は絵を描く仕事がしたいといつから思い始めましたか?
orie先生:暇な時間はとにかくずっと絵を描いている子どもでした。
学生時代は絵だけではなく、小説や音楽など興味のあるものにとりあえず挑戦していた気がします。
その中で、自分を表現するにあたって絵が一番しっくりきました。
絵描きになろう、と決意したというよりは、それをするしか私でいられないと思っていて、だからただ描いていた日々でした。
ご家族や周囲の反応などあれば合わせてお願い致します。
厚塗りや水彩塗りでもくすまない鮮やかさに目を惹かれますが、色選びのコツや気を付けられている事をお教えいただけますか?
orie先生:同じ構図でも色が違えば全く違う印象になったりします。私はビビッドな色を扱うのが苦手で、どちらかというと原色よりも灰色の混ざった色を使う事が多いです。
一番意識している事は、反対色を混ぜ合わせる事です。
原色の反対色(例えば青×赤など)だと目がチカチカするので、淡い色(水色×桃色など)を差し色でプラスすると、絵に独特な透明感が出ます。
余暇はどのように過ごされていますか?お仕事以外のルーティンやお気に入りの音楽などお聞かせください。
orie先生:コーヒーと一緒に小説を読むのもとても落ち着きます。
音楽も大好きで、起きている時はひたすら音を聴いている気がします。
クラシックだと、サティのジムノペディ、ドビュッシーのアラベスクなどが好きです。
ピアノやアコギの音、あと水の音が好きです。
影響を受けた作家さまや、絵を描くきっかけとなった人物はいますか?また出会ったきっかけもあわせてお願い致します。
orie先生:「ピンポン」から知って、それからずっと憧れの作家さんです。
友情や恋愛など、名前の付けられるもの以外の松本さんの世界にしかない繋がりのようなものを作品から感じて、それが凄く心地良いです。
ふとした台詞にも私は魅入られていて、ぱらりとページをめくった時の登場人物の言葉が、どこかの時代の自分に刺さります。
そういう世界観にも憧れています。
orie先生は、どの絵もテーマがしっかり決まって描かれているので、テーマの決め方や考え方などあれば教えていただきたいです。
orie先生:これまで「崩壊」と混同してしまっていたのですが、ひとつのものを壊していくというよりは
ひとつとひとつを合わせてひとつにする、というスタイルなのじゃないかなと気がつきました。
これの一つ目は、必ず「少女」です。
そしてその少女にもう一つ、例えば「花」だったり「光」だったり、もっと抽象的な心の深い感情の部分、黒い怪物、
そういうモチーフを合わせて一つの作品にしているような気がします。
イラストレーターや漫画家に憧れる方が多い中、プロになる前のorie様はどのような活動やアプローチをされましたか?現在も続けていることがあればあわせてお願い致します。
orie先生:すぐにたくさんの人に見てもらえたわけでも、大きなお仕事をたくさん頂いたわけでもなくて、その感情の部分だけで今まで突き進んできた気がします。
私にとって絵を描く事は自分の感情を心とは別の場所に置いておくためで、
抱えきれない気持ちがたくさんあって爆発しそうになるのを助けてもらうような目的があります。
描かなくちゃいられないから描いて、それを良いなと思ってくださる方が現れたらそれはとても素敵な事で…
ドカンというきっかけがあったのではなくて、日々が重なって出来た現在だなあと思っています。
絵に対しての根本的な向き合い方は、昔も今も変わっていません。
orie先生が描きたい絵を描き続けていくために、具体的に決めているルールや心構えはございますか?
orie先生:色々な人の目に触れて、その人の絵になってほしいと願っているので、想像する余地を常に残しておきたいと思っています。
どんな風にも解釈できて、どんな夜にも寄り添えるような作品。
だけどちゃんとそれぞれの作品に自分にとっての正解はあって、自分の気持ちに反する事は描かない…
嘘をついて見栄えを良くしてしまうと、何も届かなくなってしまいそうで怖いです。
絵に盛り込む小物や服のデザインはどのように考えていますか?
orie先生:ですが基本的には資料を見ずに頭の中だけで完成させることが多いです。
資料をしっかり見ることが苦手で、すでにあるものは描きたくないのかもしれません。
「あったらいいな」を常に想像しています。
そして、普段から自分が何が好きで何が嫌いかをたくさん考えています。
有り得ないような服装でも、絵にすると可愛かったりします。
そういった、絵だからこそ許されるような奇跡が楽しいです。
魅力的な絵を描くためのコツや、おすすめの上達法ってありますか?
orie先生:見た人がどうこうではなくて、自分の心が沸き上がる作品が描けるといいです。
この人はこんな所が好きなんだな、というこだわりは受け手側にも伝わっていくはずですので、
自分だけのこだわりを追求することが大切だと感じます。
上達のためには、一枚の作品を完成させるということを何度も何度も続けていくことかなと思います。
誰かが教えてくれる事はその人の物でしかないので、自分が苦しんで見つけ出すしか道は無いような気がしています。
自分だけの「こだわり」は、自分自身にしか見つけられない宝物なのかもしれませんね。絵を描いてきた中でも思い出深い1枚はございますか?
絵を描くのに悩んだりつまづいたりしたご経験はありますか?
orie先生:絵に対して私は最初から今まで一方通行だなあという気持ちがしています。
こっちを振り向いて、とずっと思っていますし、両頬を挟んで「こっち向いて!」と無理やり振り向かせようとしているような感覚です。
それでも頑なにこっちを見てくれませんでしたし、なんならどんどん遠くに行ってしまうような気持ちでした。
でも絶対に仲良くなりたかったので、手放さずに描き続けました。
今日は気に入らなかったけど、次は気に入るかもしれないと信じていました。
最近ようやくちらっとこっちを向いてくれる時があって、そういう作品はとても楽しいです。
どのように逆境を乗り越えたかもあわせてお願い致します。
orie先生:ですがあれ?という日が続いても、数日後にまたカチッとピースがはまったように描けたりします。
渦にはまった時にその事を考えないようにするのは不可能だと思うので、考えて悩んで、休憩して、また唸りながら作品に向き合うという感じでやっていました。
時間が経てば描けるようになります。悩まなくちゃいけない時期もあって、それは悪い事でもなくて、そういうものなのだと思います。
現在使われているブラシや、お気に入りのツールをお教えいただけますか?
orie先生は1枚の作品をつくるのにどれくらいのペースで描き上げられますか?構想やアイデア、線画、塗りでそれぞれ何時間~何日くらいか教えてください。
orie先生:それ以上経つと何を考えて描いていたのかわからなくなって、作品の中の少女の気持ちもちんぷんかんぷんで、魅力がなくなってしまいます。
構想やアイデアが一番大変で構図が決まるまで凄くかかります。決まらなければ全然決まりません。
あとの塗りは楽しいばかりです。(作品によって時間が本当にまちまちなので、正確な時間は決まっておりません…!)
お仕事の絵はたくさん時間をかけて取り組みます。
構図が決まるまでに1週間ほどかかる場合もあります。それから、とにかく丁寧に描き込まなければならないので何日もかかって仕上げます。
向き合い方が全く違って、どちらも楽しいです。
木漏れ日などの自然光やそれ以外の反射した光の入れ方で気を付けている事があれば教えてください
orie先生:頭で考えなくてはならないので影を落としていく作業は個人的に凄く大変で、
理屈や正しさもよくわかっていないのですが…最近特に絵におけるその光と影の大切さを感じるので
できるだけ意識して描くようにしています。ハイライトで演出するよりも、影で演出するイメージです!
仕事で使われている道具や機材、作画環境を教えてください。
こちらは板タブレットを使用されているのですね。デジタル作画は、絵を描き始めてどれくらいの時期から始められましたか?
過去のorie先生にご質問です、絵の練習をしたいと思い立った時にもし身近に頼れる先生やプロがいたら何を教えてほしいですか?
orie先生:デジタルだと、ソフト内のツールの説明やレイヤーの種類、効果など…
あとは仕事をするにあたって、「不安」との向き合い方を教えてもらいたいです。
想像していたよりももっと不安定な職業のように感じるので…
弊社は個別指導のイラスト・マンガ教室を運営しているのですが、個別指導で一人づつの課題に対して提案や指導が受けられるスクールについてどう思いますか?
orie先生:まず身につくまでの段階は挫折をしがちなので、先生がいることによってやる気のモチベーションにも繋がるのではないかと思います。
スクールに通う事でしか得られないものもあると思うので、そういった教室の存在はとても大切だと感じました。
今後の活動について、やってみたいことや目標はありますか?
orie先生:お仕事系では、自分のデザインしたキャラクターが動くという面白さが凄く好きなので、キャラクターデザイン。
また、文章を描くのも好きなので、絵本やエッセイ本なども携わってみたいです。
またorie様のようにプロの作家を目指す皆さんへメッセージやアドバイスをあわせてお願いします。
orie先生:でも見えているものだけが全てではありません。
皆が好きだと思うものと自分の「好き」がかけ離れていたとしても、無理やり合わせてしまわないで、自分の気持ちを大切に創作してください。
そうしてできた作品は唯一無二の存在になると思いますし、誰とも違うって本当に強い武器になります。
自分だけの世界を磨いて発信を続けていれば、必ず誰かの心に届くはずです。
そして、それが評価されるのが芸術の世界なのだと信じています。
こうするべき、なんて言葉に囚われず、あなたの気持ちのままに歩いて下さい!
作家プロフィール:orie先生
今まで携わったお仕事は、キャラクターデザイン、MVイラスト、グッズ製作、書籍の装丁など。
現在、画集「ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK orie」(翔泳社)が発売中。