イラスト制作のライティング表現を解説!光の描き方応用
この記事はイラスト・マンガ教室egacoの講師(イラストレーター・マンガ家)が商業制作などで磨いた知識や技術をもとに作成しています。より自分の描きたいものに合わせた内容を知りたい方は、egacoでの個別指導レッスンの受講をおすすめします。
目次
「線画までは出来たけど、どうやって塗ったらいいのか分からない!」
「塗ってみたはいいけど、イマイチ納得いってない…」
こんな経験ありませんか?
それは自分のイラストに合ったライティングの方法を知らないことや光表現を使った構図が考えられていないことが原因かもしれません。
この記事では、初めてライティング表現に挑戦される方のために、基本用語の解説や、上級者のためのイラストを何段階もステップアップさせる、「光」のテクニックについてお伝えします。
絵におけるライティングの意味・基本用語を解説
ライティングってそもそも何?
絵におけるライティングとは、「絵が目的通りの仕上がりになるよう、光の当て方や光量を考えること」です。
英語表記では執筆を表す「writing」ではなく、スポットライトの「ライト」と同じ英語の「lighting」ですのでご注意ください。
光の当て方を少し変えるだけでもイラストの印象というものはガラリと変わってしまいます。
そのためイラストを描く際には、「どこに影が入るか」やその影を発生させる「対となる光はどこに置いたらよいか」を考える必要があります。
ライティングの使用目的は絵の印象操作
2枚の画像は、どちらの方が怖そうに見えますか?
Aの方が怖そうな雰囲気ですよね。それはライティングの演出でイメージを操作しているからです。
ライティングとは、光の方向だけを表すのではありません。
- 見せたい部分に視線を誘導するため
- 照らされる物のイメージを演出するため
- キャラクターを印象付けるため
- 物を見やすくするため
など、挙げればキリがありません。つまりライティングをマスターすれば「見る人の印象も思い通りに変えられます。
光と陰影の基本用語を知ろう
- ハイライト・・物体の中で最も明るい部分のこと
- 明暗境界線・・明るい場所から暗い場所へ移り変わる境界線のこと
- 反射光・・光が物体に反射することによって起こる照り返しの光のこと
- 落ち影(影・シャドウ)・・物体にさえぎられて、できる影のこと
陰影の基本用語は上記の記事で詳しく解説してますので、こちらもチェックしてみましょう。
ライティング例14種類・役割を解説
ループライト・バタフライライト・プレーンライト
ループライト
鼻の影が少し横に落ちるように斜め上から光が当たります
バタフライライト
真正面少し上から光が当たりますこの二つがイラスト制作ではよく見られます。「普通」と言ってしまうとそれまでですが、他のライティングと比べると、どちらも明るくカジュアルな印象になります。
プレーンライト
左右どちらかの前方45度付近から光が当たります。上記の二つと比べると少しだけ絵画のような印象になりますが、こちらもイラスト制作ではよく使われます。
フロントライト・サイドライト・逆光
4:フロントライト
見る人側から光が出ています。最も影が出来づらいです。
犯人がスポットライトを当てられた瞬間や、写真のフラッシュなどの表現でよく使われます。
また、「ループライト・バタフライライト・フロントライト・プレーンライト」のような正面あたりからの光を総称して「順光」と呼ぶことがあります。
5:サイドライト
文字通り横からの光です。
メッセージ性が強くなり、ドラマチックな印象になります。
6:逆光
後ろから照らす光です。顔が見えないほど光が強い場合、ド派手な登場などを表現するのに使用しますが、柔らかめの光の場合はロマンチックな印象にできます。
レンブラントライト・ブロードライト・ショートライト
レンブラントライト
キャラの頬に三角の影ができる光の当て方です。画家のレンブラントの画風が由来です。
ブロードライト
レンブラントライトを使い、手前が明るくなります。
ショートライト
レンブラントライトを使い、奥が明るくなります。
正しく表記する場合は「ブロードレンブラントライト」や「ショートレンブラントライト」と書きます。
レンブラントライトはどれもクラシックな印象になり、雑誌の表紙や絵画のような雰囲気に近付きます。
トップライト・アッパーライト
トップライト
真上から当たる光です。夏の真昼の太陽光等もここに分類されます。
商品カタログの写真等に使われるので、あまり人に使われることはないですが、目や鼻の下に影が落ちるので、覚悟が決まった人という印象になります。
アッパーライト
下から照らす照明です。
ホラーな雰囲気を演出したり、強そうな雰囲気を作り出せたりします。
バックライト・リムライト・バックグランドライト
バックライト
キャラの影側から当たる光です。
リムライトより範囲は広めな事が多いです。
影色に色を入れたい場合や、影の濃さを調節したい時などに使用し、リムライトと同じく輪郭を強調します。
リムライト
キャラの輪郭を協調するような光です。
リムライト単体で使われることは少なく、背景色を入れて馴染ませたり、輪郭を強調する際に使われたりします。
バックグラウンドライト
人ではなく、背景に当たる光です。
背景や空間全体に演出を加えるのが目的になります。奥行きが出来るので、キャラが際立ちます。
光源の硬さと反射について知ろう
光の当たり方に対して硬い光、柔らかい光と表現します。
1方向から強い光が当たり、影が濃い状態を「光が硬い」、様々な角度の光が当たり、均一に明るい状態を「光が柔らかい」と言います。
反射光にも強弱はある
これは両方とも同じ強さの光が当たっているという想定で描かれたものです。
反射光とは、壁や地面から跳ね返った光が当たり、影側でも明るく見えることを言います。
地面が白くてツルツルのほうが反射光が強くなり、地面が黒くてザラザラのほうが反射光が弱くなります。
複数のライティングを組み合わせよう
プレーンライトと、バックライトと、リムライトを組み合わせた例です。
プレーンライトをメインの光源とし、暗くなりそうな部分に柔らかいバックライトを使用し、輪郭を強調するためにリムライトを入れました。
このように複数のライティングを組み合わせることで、被写体の見え方をさらに操作できます。
適切なライティングが選べる5つのテクニック
1:環境に合わせて光の種類を決めよう
被写体に当たる光は周りからの影響を受け変化します。「季節」「時間帯」「天気」「照明」「場所」「光源の色」に分けて解説していきます。
春は光が柔らかく、全体的にピンクに近い色合いです。
夏は光が硬く、青色が強調されます。
強い日光が地面から照り返して影色も少し明るくなります。
太陽の位置が上にあるとより夏らしさの演出に繋がります。
秋はやや硬めの光で、赤やオレンジが強調された暖かい色合いになります。
冬はかなり光が柔らかく、全体的に冷たい色合いで彩度が低いです。
日光も横から当てるとより冬らしさの演出に繋がります。
このように季節一つでもイラストの印象は大きく変わってしまいます。
時間帯による違いを理解しよう
時間帯によってもライティングは大きく変わります。
明け方であれば光源は横からになり光源側は黄色が強く、影側は冷たく青白い色合いになります。
昼間は光源が高くなり、固有色もはっきりと確認できます。
夕方は光源が低くなり、光源側がオレンジになり、全体的にもオレンジが強調された色合いになります
夜は光の当たり方が全体的に均一になり、暗く青い色合いになります。
天気による違いを理解しよう
天気によっても見え方が違ってくることに注意が必要です。
曇りの日は、固有色が見えづらくなり、柔らかい光で青色がわずかに強調されます。
日中の雨は、曇りよりも明るくなります。
青色がわずかに強調され、さらに柔らかく白い靄のようなライティングになります
照明の種類による違いを理解しよう
現代では照明はLEDで色味を変えられることが増えましたが、場所や時代によってはこれらの電灯を使っている場合があります。
白熱電球は少し赤色が強調されます。
蛍光灯はオレンジとわずかに緑が強調されます。
白色のLEDは黄色とわずかに青が強調されます。
場所によるライティングの違いを理解しよう
場所によってもライティングは変化します。
どう変化するか分からなくなった場合は、その場所に白い物体があったらどんな色になるのかと考えるといいでしょう。
光源に色がついた場合の違いを理解しよう
光源に色がついている場合、このように光が当たった場所の色味を自由に変えられます。
よりデザインチックな雰囲気になりますので、一枚絵や、キャラクターのみで成立させたい場合にオススメです。
2:光の形を変えてみよう
光源は物に遮られると、その形が変わります。
光の形を変えることで、画面外の光を遮った物の存在を感じさせることができます。
また、光の形によっては視線を誘導することも可能です。
木漏れ日のライティング表現
これは木漏れ日の表現です。
光だけでも木の影に居ることが分かります。
これは雲の影が落ちる表現です。
キャラクターのシルエットが強調されてより印象深い演出にできます。
3:ラフの段階から光源を考えてみよう
ライティングは構図にも影響を及ぼすほど大事な要素です。
構図を考える段階で、光源の位置や、出来る影なども考えながら配置しましょう。
①の例では、キャラの顔にしっかり光が当たり、あわせて余白も左右均等で、安定感があります。ほっとする画面構成になっています。
②の例では、キャラの顔に影が落ち、画面外へと延びる影とアンバランスな余白によって、不穏な雰囲気、物語が今にも始まりそうなドキドキするような画面構成です。
このように、ライティングをラフの段階から決めることによって、それに合わせた構図を考えることができ、より演出の凝ったイラストを仕上げられます。
4:影からではなく、光から描いてみよう
皆さんはイラストを描く際、どこから塗っていますか?影色を全体に塗ってから、光が当たっている部分を描くという方法もあります。
こうすることで、光が当たっている部分をより意識しながら描くことができ、明暗がしっかりとした、印象に残るイラストになります!
影から描いても結果的に同じ見た目になれば何も問題はありません。好きな方法を選びましょう。
5:キャラを背景に馴染ませよう
ライティングの重要な役割として、キャラを背景と馴染ませる効果があります。
背景が緑色の空間なら、キャラに当たるバックライトが周りの影響を受け緑系統になります。
背景が影響を与えた光の事を「環境光」と言います。
森の中なら緑色に。赤い部屋なら赤色に、環境光の色合いが変化していきます。
- 加工無し
- エアブラシで影側に柔らかいバックライト追加
- 緑のリムライト追加
- 全体に統一感をもたせるために、全体を緑色に少しだけ近づける
バックライトやリムライト、全体にかける効果レイヤーなどに環境光の影響を反映させましょう。
上級者向けライティング応用・作例を紹介
下記のようなごく限定的な状況でのみ発生する光の表現も存在します。
なかなか描く機会は無いかと思いますが、挑戦するときはよく資料を見て、きちんと描写していくようにしましょう!
サンキャッチャー
ブラインド
プールの近く
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