厚塗りの描き方・やり方コツを解説!クリスタ初心者にもおすすめ
この記事はイラスト・マンガ教室egacoの講師(イラストレーター・マンガ家)が商業制作などで磨いた知識や技術をもとに作成しています。より自分の描きたいものに合わせた内容を知りたい方は、egacoでの個別指導レッスンの受講をおすすめします。
厚塗りは、重厚感のあるリアル調なイラストを表現できる塗り方で憧れますね。
「厚塗りで絵を仕上げたいけどやり方が分からない」「厚塗りって難しいんじゃないの?」と思ったことはありませんか?
厚塗りは「アニメ塗りをベースに塗っていくこと」で、初心者でも簡単にチャレンジできます。
厚塗りの手順と、上手に見える6つのポイントを押さえて、理想通りのイラストに近づけましょう!
厚塗りの基本!特徴やメリット、ツールを紹介
厚塗りとは
厚塗りとは、デジタルにおける着色方法の一つです。
一般的に主線が目立たないものが多く、油絵のように上から塗り重ねることにより立体感のある絵に仕上げていく技法です。
人によって仕上がりは様々ですが、上記の塗り方で塗られたものが幅広く厚塗りと呼ばれています。
厚塗りのメリット
工程が多く一見難しそうな厚塗りですが、他の塗りと比較してこのようなメリットがあります。
- 線画をきっちり引かなくてもよい
- 上から加筆して楽に修正ができる
- 線画が目立たないので、リアル調に仕上がり絵が上手に見える
特に線画をきれいに引くのが難しいという方には、厚塗りはおすすめです。
また塗りの後でも加筆して調整できるので、ある程度ラフの状態からでも描き進められます。
厚塗りのおすすめツール
厚塗りで着色をするときのおすすめのブラシツールを紹介します。
今回はお絵描きソフト『CLIPSTUDIO』に入っているブラシで説明しますが、完成した作品が厚塗りに見えればどのブラシを使っても問題ありません。
このブラシが正解!というものはないので、迷った方はここで説明しているブラシを使って自分にあった厚塗りブラシを探してみましょう。
ブラシツール「不透明水彩」
「不透明水彩」のブラシは、なめらかなタッチで色を重ねられます。
状況に応じてバケツツールではなく不透明水彩ツールを使って全体を着色すると、塗りムラが残り、厚塗りらしい筆の跡を残せます。
ブラシツール「透明水彩」
不透明水彩よりも透明度が高いため、ソフトなタッチで塗り重ねられます。
柔らかな陰影の表現に最適です。
ブラシツール「油彩」
色の透明度が低いため、しっかりと着色できます。
強いハイライトを入れたい部分など、アクセントを入れたいときにおすすめです。
このような初期から使えるブラシ以外にも、CLIPSTUDIOには『CLIP STUDIO ASSET』というソフト内で利用できる素材が集まったサービスがあります。
自分に合うお気に入りのブラシを探してみましょう。
厚塗りの描き方手順!初心者向けに解説
アニメ塗りをベースに手順を踏んで塗っていくことで、初心者でも厚塗りにチャレンジできます。
以下では初心者の方におすすめの厚塗りの方法を、メイキング形式で解説します。
まずはこの方法を試して、徐々に自分の塗り方を探していきましょう。
手順1:ラフ、または大まかな線画の用意
まずは主線を用意しましょう。
厚塗りは後半で線画を上から塗りつぶすため、ラフの段階のものでも構いません。
ラフをそのまま使う場合は、消しゴムなどで迷い線を減らして整えておきましょう。
しっかりとペン入れをする場合は、最後に加筆修正をして線画を塗りつぶしていくため、あまり線を複雑に引きすぎないように意識しましょう。
今回は、ラフを整えたものを主線として使用します。
手順2:カラーラフ作成・色分け
完成させたいイラストの方向性に合わせて、大まかに色を置きカラーラフを作ります。
デジタルでは後で色味を変えられますが、厚塗りは最終的に色や線を潰したり削ったりして完成させていくため、大まかな完成イメージと方向性を決める必要があります。
カラーラフで全体のベースの色が決まったら、バケツツールなどを使用したベタ塗りで色分けをしましょう。
途中まではアニメ塗りの手順のため、パーツごとのレイヤー分けも行います。レイヤー分けについて詳しくはこちらもご覧下さい。
手順3:光と影付け
色分けしたものに、光と影を付けていきます。
色分けしたベースカラーに、大まかな光をエアブラシで入れておくことで、より全体の光と影の関係性が分かりやすくなります。
今回は、加算(発光)レイヤーを不透明度30%にして、クリッピングしています。
光を入れたら、光が当たる箇所の反対側に影を付けていきます。
大まかな影(1影)から加えましょう。
もう一段階濃い影や、細かい影(2影)を加えましょう。
大まかな影(1影)→より暗いところに細かい影(2影)を入れることで、更に立体感が出ます。
影に関してはここで厚塗りやテクスチャーなどを意識する必要はなく、アニメ塗りの着色で構いません。
手順4:ハイライトやアクセント
全体の明暗を塗れたら、光が特に強く当たる箇所へハイライトを入れます。
更に立体感と空気感を出すため、影に異なる色を置いて色数を増やす作業も同時に行います。
色数を増やしていく際、ただ違う色を置けばいいというわけではありません。
色相で明暗をつけるときは、影は青色、光は黄色に近づくことを意識すると自然な表現ができます。
このポイントに基づき、アクセントになる色を塗っていきます。
この段階で、後で加筆しやすいように線画の色を色トレスでベースカラーとなじませておきましょう。
色トレスとは、クリッピングマスクをかけて線画の色を変更する技法です。
厚塗りではリアル調に寄せていくのが目標ですが、現実のものには複雑に様々な色味が反映されます。
そのため、ベースと少し異なる色を混ぜることで、よりリアルな雰囲気に近づき、魅力的に仕上がります。
手順5:反射光と全体の調整
全体のバランスを見ながら、落ち影や反射光、更に光と影を追加します。
落ち影や反射光は、パーツごとではなくキャラクター全体に影響するため、すべてのレイヤーの上から塗っていきましょう。
落ち影は乗算、反射光はオーバーレイやスクリーンなどの効果レイヤーを使って塗ることで、より全体の色味が馴染みます。
手順6:線画の上から加筆して整える
線画の上から更に加筆・修正を行い、より細かな描写を行います。
着色した周囲の色をスポイトで取りながら線画を塗りつぶすように加筆していくことで、よりリアル調になり、イラストの完成度が上がります。
キャラクターイラストの顔回りは、重要な要素なので特に丁寧に細かく加筆しましょう。詳しい目の塗り方については下記も参考にしてみましょう。
納得するまで加筆・修正が出来たら、完成です。
よりリアルな質感に近づけるため、洋服部分に布のテクスチャー素材を貼りました。
このテクスチャーはCLIP STUDIOに元から入っている素材「キャンパス地」を使用して、布の質感を出しています。
最後にエアブラシ内の「スプレー」で白を散らし、より画面に情報量を増やしました。
より上手に見える厚塗りの6つのポイント
1:ベースカラーと相性のいい色を組み合わせる
厚塗りする上でより鮮やかな絵に仕上げるためには、色選びに気をつける必要があります。
ベース塗りがオレンジや黄色の暖色系の場合は、カラーサークルの反対側にある寒色系の影を置き、逆にベース塗りが青の寒色系であれば赤などの暖色系の影を置きましょう。
必ずしも全ての色相をずらす必要はありませんが、イラストに色数が増え、より鮮やかに仕上げられます。
2:色選びは色相・彩度・明度を意識する
色相
色相とは色の濃い原色や、赤、黄、青など色の違いを指す用語です。
イラスト全体のイメージカラーが暖色であれば赤、オレンジ、黄色を、寒色であれば水色、青、青紫系統のように色相が隣接している近い色を選ぶと絵全体がまとまりやすいです。
彩度
彩度とは色の鮮やかさを指す用語です。
彩度が高いほどビビットで鮮やかな色合いになり、彩度が低いとやわらかい印象や地味な色合いになります。
厚塗りの際は彩度の高いビビットな色は避け、やや彩度を低くしたくすみのある色で塗り進めましょう。
明度
明度とは色の暗さ、明るさを指す用語です。
明度を上げると明るく白に近くなり、下げると暗く黒色に近くなります。
厚塗りはリアルに陰影をつける必要があるので、光がどこから差し込んでいるか考えながら明度の高いハイライトを入れ、影が濃いところは明度を下げた色を置きましょう。
参考:配色のコツ・やり方
全体の明度を確認したい場合は、一旦絵をモノクロに変更し、メリハリがしっかりついて見えるかどうかでチェックできます。
明度差がないとぼんやりした印象になってしまうので注意しましょう。
3:ブラシの使い方を工夫して色を重ねる
色選びについて説明したように、肌色が暖色ベースなのでワンポイントで青系の寒色影を置くと良いでしょう。
青紫色を水彩系のブラシで置き、周囲の色となじむようにスポイトで取りながら塗り重ねましょう。
きれいなグラデーションで透明感のある肌を演出できます。
すべての影に反映するのではなく、より影が落ちているところにポイントで色を入れるのがコツです。
4:線画を塗りとなじませ目立たせない
線画、またはラフを用意して塗り進めた後、線画をあまり目立たないようにするのが厚塗りのポイントです。
- 線の色を変えて塗りとなじませる(色トレス)
- 周りの色をスポイトで取り、線画の上から塗りつぶすように加筆する
この方法で整えましょう。
こうすることで塗りと線画が分離せず統一感のあるタッチになり、よりリアル調なイラストに仕上げられます。
5:素材の質感を表現する
人物、洋服などの布、金属やプラスチックといった素材の質感を塗り分けられるとよりリアルで説得力のある厚塗りイラストになります。
光沢のある素材のものにはハイライトを強く入れたり、逆にやわらかな素材のものは濃い影を控えたりすることで、それぞれの質感を描き分けられます。
上記の描き分けが難しい場合は、テクスチャを貼り込むだけでも厚塗りイラストの質感を変えらるので、やってみましょう。
6:光の当たる位置と影の出来る位置を考える
厚塗りをする上で重要になるのは立体感です。
立体感をより表現するには、光源の正確さが大切になります。
着色していく前に大まかでもよいので、光がどの方向から当たっているのかを決めてから塗りましょう。
- 例) 光源は左上から当たっている。影は右下の方に落ちる。
- 例) 光源は後ろから当たっている。影は手前の方に落ちる。
光が当たっている面とは逆の面に影が落ちて暗くなるため、それを意識して影をつけていきましょう。
影はあまりぼかしすぎないよう、メリハリをつけて塗ることも大切です。
すべての影やタッチをぼかしてしまうと、影が汚く見えてしまったり、全体を見たときにぼんやりしたイラストに見えてしまったりするため、気を付けましょう。
これらをより正確に捉えて表現するにはデッサン力が必要になってくるため、もっと詳しく光と影の関係について知りたい、よりリアルな表現を追求していきたい場合は、デッサンやクロッキーの練習にも取り組んでみて下さい。
ポイントを押さえて、厚塗りにチャレンジしてみよう
厚塗りは一見難しい塗り方に見えるが、ポイントを押さえ手順を踏んで進めていくことで上手に見せられます。
また、紹介した塗り方だけではなく、人によって進め方や技法は変わってきます。
これが正解というものはないので、まずはこの記事のテクニックを真似てみて、自分に適した手順を探してみましょう。
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